AI と仕事をしていて疲れるのは、AI が返してくる結果を読み、正しいかを判断する回数が多すぎるからです。講師のせお丸さんがこの「認知負荷」を下げるために使っている方法は6つで、まずは Claude Code の返事の1行目に絵文字の印を付けさせます。Claude と Codex は Superset というアプリ1つにまとめ、タブには作業名を付けておく。長くなった会話は3行で要約させ、読むのがつらい報告だけを HTML で出させる。並列で動かす作業は3つまでです。反対に、ターミナルの画面分割、公式のデスクトップアプリ、エディターのプラグインは、試したものの合わなかったと話していました。
2026年8月18日のセミナーの講師は、AI駆動開発協会で法人向けの AI 研修をしているせお丸さん。エンジニア歴はおよそ19年で、ふだん Claude Code や Codex を使う中で続けている工夫を、失敗談も含めて紹介しました。後半は参加者とのディスカッションで、Procevo を運営する KEITO や参加者のやり方が語られ、安い中国製モデルについての質問も出ています。
気に入っている点として挙げていたのは、プロジェクトごとに会話の履歴を分けて管理できることです。Codex のアプリはプロジェクトごとの管理ができますが、Claude のデスクトップアプリはやりづらい印象を持っていたと言います。ただ、最近は Claude のアプリを立ち上げていないので、今はできるようになっているかもしれない、とも補足していました。終わったプロジェクトは畳んでおけるので、今どれが動いているかもひと目で分かります。
どの画面で何が進んでいるのかがまったく分からなくなり、いちばん疲れたのがこのやり方だったそうです。これを解消するために Claude の公式からはエージェントビューという機能も出ています。2026年11月時点の公式ドキュメント[エージェントビュー]によると、claude agents で開き、動いているもの、こちらの入力が必要なもの、終わったものを1つの画面で確認できます。せお丸さんも使ってみたものの、使い心地は悪く、負荷は高いままだったとのことでした。
3つ目は Cursor や VS Code といったエディターに、プラグインとして Claude Code を入れる形です。実際に使うと結論はよく、これでいいと一度は思ったと言います。ところが、ターミナル版の Claude Code ならできる Claude in Chrome でのブラウザ操作が、プラグイン版ではできないといった問題がありました。公式で出た機能がプラグインにまだ入っていない、という時差もストレスだったと話していました(今はそのバグが直っているかもしれない、とも言っています)。
デモで見せたのは、自社の事業について Claude Code に経営コンサルのような相談をしている画面でした。中身のボリュームが多く、マークダウンのまま読むのはかなりつらい量です。こういうときに HTML でレポートさせると、グラフも入って見やすくなります。
ただし、何でも HTML にすればいいとは考えていない、というのがせお丸さんの個人的な意見でした。HTML は人には見やすいものの、AI にとっては余計なコンテキストを使い、情報量が多いぶんコストも上がります。一度 HTML を作ると、Claude とやり取りするたびに HTML を更新する作業が発生し、遅くなるうえに高くつきます。
せお丸さんは並列を増やしすぎると、冒頭で触れた AI ブレインフライのように集中力や判断する力が慢性的に落ち、健康にも関わると説明していました。スライドの結びは「上限は『AIをいくつ動かせるか』ではなく『自分がいくつ確認できるか』で決める」でした。ここまでの工夫を組み合わせたうえで、並列にするとしても3つくらいまで、という締めくくりです。
ほかの参加者は、どうやって負荷を下げている?
後半は参加者のやり方も紹介されました。KEITO は Codex を Claude Code から MCP(AI と外部のツールをつなぐ共通の仕組み)でつなぎ、主に画像の生成に使わせています。複数のセッションを同時に立ち上げることはあまりなく、あっても2セッションほど。そのかわり、自宅に置いた Mac mini では常に6セッションほどを立ち上げておき、スマホのリモート操作から、思いついたことを音声で投げています。
これを聞いたせお丸さんは、公開された HTML や PDF のレポートを見るので、マークダウンを読むより負荷が下がる、という話だと受け止めていました。
参加者からは Discord 経由で Claude Code を使っている例も出ました。自宅の Mac Studio で Claude Code を起動したままにし、Discord とつなぐ仕組みを通して指示を出す形です。日中は仕事で Mac に触れないので、通勤の電車や昼休みに Discord から頼みます。指示も返事もログとして残るため、履歴の管理も兼ねられます。
人と会話しているような感覚になり、アイコンが出て話しかけてきて、返事が来たら通知も届く。認知負荷の点ではターミナルよりやりやすそうだ、という声も出ていました。せお丸さんも Claude Code に Discord から直接話しかける使い方は素敵なアイデアだと返しています。Discord から AI エージェントを動かす方法は、Claude CodeとDiscordを連携|スマホからAIエージェントに仕事を頼むの回で詳しく紹介しています。
安い中国製のモデルで、利用制限を節約できる?
参加者から出た質問です。Claude Code を使っていると利用制限に早く届いてしまうので、中国製のモデルで安く済ませられないか。今は VS Code の拡張機能から、モデルの重みが公開されているオープンウェイトのモデルをアメリカのサーバー経由で試している、という内容でした。
せお丸さんも中国製モデルを一部使ったことはあるものの、今はまったく使っていないそうです。モデルの性能が上がってきているのは間違いないと認めたうえで、使わない理由を2つ挙げていました。1つは信用性。ビジネスで使えるか、政治的なリスクはないか、という点です。もう1つがハーネス、つまり Claude Code という仕組みそのものの出来でした。
深く考えてくれる、エージェントチームを組める、サブエージェントを自動で増やしていく。こうした動きはモデル単体の力ではなく、Claude Code の仕組みが優れているからだと、せお丸さんは見ています。ほかのツールから同じモデルを呼んでも Claude Code ほどの成果は出ないだろうとのことで、実際に OpenClaw から Opus を呼んだときも薄い結果が返ってくる体感があったそうです。少しお金を出して良い結果をもらい、時間を節約したほうが結果的にコストパフォーマンスはいい。これがせお丸さんの個人的な結論です。
質問した参加者は、壁打ちは安いモデルで行い、最終的な出力は Claude Code で整えて異常がないかを確かめる形を考えていると話していました。せお丸さんはそれを「めっちゃいいかもしれない」と受け、Claude Code からサブエージェントとして安いモデルに情報収集やファクトチェックを任せるなら、安いモデルで十分だと付け加えていました。
まとめ
AI への認知負荷は、AI の結果を読んで判断する回数が多すぎることで起きる。せお丸さんは生産性の低下や慢性的な疲れにつながると説明していた
Claude と Codex は Superset(2026年11月時点の名前は Paradev)で1つの画面にまとめ、タブには作業名を付ける
長くなった会話は /ss のような3行要約のスキルで思い出し、読むのがつらい報告だけ HTML で出させる
並列で動かすのは3つまで。上限は AI を動かせる数ではなく、自分が確認できる数で決める
画面分割、公式のデスクトップアプリ、エディターのプラグインは、講師の使い方には合わなかった
よくある質問
AI への認知負荷とは何ですか?
AI に指示を出し、出てきた結果を読み、正しいかを判断する。この繰り返しで脳にかかる負担のことです。せお丸さんは Claude Code などと話していて結果を読むのが疲れる、承認するのが疲れる、という AI 時代の新しい疲れ方をこう呼んでいました。原因は情報が足りないことではなく、多すぎることにあります。