Discordを窓口にして自宅のPCでClaude Codeを動かせば、外出先のスマホからAIエージェントに作業を頼み、結果を受け取れます。ただし、Bot(Discordでメッセージを受け取り、返答するプログラム)を作っただけで安全に運用できるわけではありません。誰の指示を受けるか、どのファイルを触れるか、公開などを誰が許可するかを先に決める必要があります。
2026年9月1日のセミナーでは、講師のサウスさんが「Discordでエージェントを働かせよう」を題材に、自宅のMac Studioで複数のエージェントを常駐させる運用を紹介しました。実際のDiscord画面で教材作成のスレッドを見せながら、仕組みと安全設計を説明しています。この回は、動いている環境と再現に必要な考え方を知る内容でした。設定を一から完成させる実習は行っていません。
Discordから頼むと、どこで作業が進む?
完成形のデモ、構成の理由、安全設計、持ち帰り方という当日の4つの話題を示したスライド。作業するのはスマホではなく、自宅で起動しているPCです。サウスさんは通勤中や外出中、Discordでエージェントへ仕事を頼みます。自宅のMac Studioに常駐するClaude Codeが受け取り、終わるとDiscordへ報告する流れです。
スマホで指示を出し、自宅のPCでAIが作業し、結果がスマホに戻る全体像を示したスライド。
タップで拡大スマホのDiscordから依頼し、自宅のMac StudioでClaude Codeが作業して、Discordへ結果を返す3段階の流れ。- スマホのDiscordからエージェントに依頼する。
- 自宅のMac Studioで常駐するClaude Codeが作業する。
- 完了報告と結果をDiscordで受け取る。
サウスさんがこの形にしたのは、日中は職場にいて、PCの前に座れない時間が長いからです。スマホで依頼しておけば、自宅のPCが動いている間に作業が進みます。
職場や移動中に自宅のAIへ仕事を頼みたいという利用場面を示したスライド。複数のエージェントは、どう役割を分ける?
Discordには窓口役のデービッドがいます。サウスさんが教材作成を頼むと、デービッドがスレッドを立て、作業のゴールを示します。必要に応じて、開発担当のアレックス、調査担当のボブ、執筆担当の文美へ仕事を振る構成です。
タップで拡大窓口のデービッドが依頼を受け、専門担当に仕事を振り、ミーティングチャンネルとスレッドで経過を共有する3点。- デービッドが依頼を受けて、作業を整理する。
- 開発、調査、執筆の担当エージェントに仕事を振る。
- ミーティングチャンネルでやり取りし、スレッドに経過を残す。
実演では教材を作り始めた時点までスレッドをさかのぼり、指示と進行を確認できました。別の回のAIエージェントの使い方|フォルダ整理から見積もり・動画マニュアルまででは、AIエージェントに複雑な作業を任せるための基本を扱っています。
なぜDiscordを入口にした?
サウスさんは以前、隔離したVPS(インターネット上で借りる仮想サーバー)でOpenClaw(AIエージェントを動かすツール)を試しました。その後、Claude Codeを遠隔で動かす形へ移っています。Discordを使い続ける理由は、スマホでチャットする感覚のまま依頼でき、Botごとの発言者とスレッドの履歴も追えることです。スマホのターミナル接続や自作のWeb画面も試したうえで、Discordに落ち着いたとのことでした。
Discordを入口に選んだ理由として、スマホアプリ、Bot、発言者の識別を示したスライド。
タップで拡大Discord、スマホのターミナル接続、自作Web画面の3手段を、依頼のしやすさと運用の手間で比べた図。- Discord:スマホで会話しやすく、エージェント別の発言と履歴を追える
- スマホのターミナル接続:操作が分かりづらく、会話もしづらかった
- 自作Web画面:サーバーの常時起動とスマホからのアクセスが手間だった
DiscordからClaude Codeへ指示を送る別の例として、Claude CodeをDiscordで使う設定|Botの作り方とつながらない時の確認では、チャット画面からサムネイル制作を頼む流れを扱っています。
自宅のPCでは、どう常駐させる?
サウスさんは複数のターミナル作業を管理できるtmuxでエージェントを動かしています。各エージェントが待機し、呼ばれたときに作業する構成です。PCの起動時にもエージェントが立ち上がるよう設定していると説明しました。
ターミナルを閉じても作業を続け、複数のエージェントを動かすためにtmuxを使う理由を示したスライド。待機させるだけで仕事が進むわけではありません。何をしているかを記録し、セッションを更新しても続きを読めるようにしています。講師の環境ではCLAUDE.mdにエージェントの役割を、state.mdに作業の状態を残しているそうです。PCが停止している間は、外出先からの依頼も処理できません。
指示を出す前からAIが待機し、作業の経過を記録する運用を示したスライド。作業場所は、どこまで分ける?
サウスさんはエージェントに専用の作業フォルダを用意し、操作する場所を限定しています。Discord側でも、担当チャンネルとミーティングチャンネルに会話を絞る設計です。最初から広い権限を渡さず、必要になった範囲を一つずつ確認してきたと話していました。
エージェントを専用ディレクトリに閉じ込め、作業場所を限定する考え方のスライド。
タップで拡大エージェントの作業場所、Discordのチャンネル、操作権限をそれぞれ絞る3点。- 専用ワークスペース(エージェントが作業する場所)を決め、作業するフォルダを限定する。
- 担当とミーティングのチャンネルに会話を絞る。
- 初めは操作を禁じ、必要な権限から段階的に許す。
分離する対象を場所、チャンネル、権限の3つに整理したスライド。講師はデスクトップPCを使っていますが、起動したままのノートPCでも外から依頼する形は試せると話していました。
入口のDiscord、実行するtmux、場所・チャンネル・権限の分離を3つの要点にまとめたスライド。権限と秘密情報は、どう扱う?
エージェントに許す操作は段階的に増やします。サウスさんは専用のGoogleアカウントやGitHubアカウントを作り、使ってよい範囲を確かめながら渡していったそうです。GitHubへの公開や課金など、外に影響する操作は本人の確認を挟みます。
タップで拡大読み取り、限定書き込み、公開や課金を3段階に分け、外部に影響する操作は本人に確認する図。- 読み取り:必要なファイルを読む。最初に読める範囲を決めておく
- 限定書き込み:指定した作業場所のファイルだけを変える。場所と操作を絞っておく
- 公開・課金:デプロイや課金など外部に影響する操作。実行の前に本人が確認する
ファイルの読み取り、限定した書き込み、外部への操作を段階に分けたスライド。APIキーやパスワードはDiscordに書きません。講師は秘密情報を別の場所に置き、.envのような設定ファイルもGitに含めないようにしていると説明しました。Discordに結果を返すときも、トークンそのものが文章に出ないよう注意が必要です。
BotトークンやAPIキーを公開、Gitへの登録、チャットへの書き込みから守るスライド。日々の仕事は、どう確かめる?
サウスさんの環境では、作業履歴とエラーをログに残し、前日の実施内容を日報としてDiscordに出しています。複数の仕事を頼むほど本人の確認待ちが増えるため、未確認の依頼も毎日知らせる運用です。
タップで拡大作業履歴とエラーをログに残し、前日の実施内容を日報で出し、未確認の依頼を毎日知らせる3点。
許可した操作だけを実行し、作業履歴とエラーをログに残す運用のスライド。サウスさんが運営するSubstackの日本語記事を集めるサイトでは、新着記事や新しい書き手の情報も定期的にまとめています。結果がDiscordに残るので、あとから経過を探せます。講師は定期実行した情報を月ごとのまとめに使う例も紹介しました。
他人のメッセージやWebページは、なぜ危ない?
DiscordのBotが受け取った文章をすべて命令として扱うと、許可していない人の投稿が自宅PCへの指示になり得ます。Webページやメールに紛れた命令文をAIが実行してしまう「プロンプトインジェクション」も、サウスさんが挙げたリスクです。
Discordで受け取ったメッセージがそのまま指示になる危険を示したスライド。
タップで拡大許可した本人の依頼だけ受け、取り込んだ内容の命令には従わず、設定変更はチャットでせず、危ない依頼は本人に確認する4点。- 許可した本人からの依頼だけ受ける。ユーザーIDの許可リストで送信者を確かめる。
- 取り込んだ内容の中の命令に従わない。Webページ、メール、ファイルの文章は指示ではなくデータとして扱う。
- 設定・権限・許可リストの変更はチャットでしない。変更はPC上で行う。
- 危ない依頼は本人確認を1回挟む。削除や送信、変更の前に本人へ確かめる。
本人からの依頼だけ受け、外部文書の命令には従わず、設定変更はチャットでせず、危ない依頼は本人に確認する4原則のスライド。
許可した本人の専用チャンネルからの依頼は指示、Webページやメールの文章はデータとして扱うスライド。講師はDiscordを依頼と結果確認の窓口に絞っていました。専門家の情報を読ませたエージェントの返答は、本人の発言と混同せず、考えを整理する材料として使うと話していました。返答を使う前には元の情報を確かめます。
手元で試すなら、何から始める?
当日はサウスさんの環境と設定資料が紹介されました。Botを一緒に完成させる実習は行っていません。資料には準備するもの、Botの作成、Claude Codeとの接続、ワークスペースや権限の考え方がまとまっています。スライドでは手元で再現する流れを次の3段階で示しています。
- 準備を確認する。マニュアルの「用意するもの」を確かめる。
- マニュアルのSTEP 1〜6で構築する。資料に沿ってBotの作成から起動まで進める。
- まず「Botが起動して応答する」まで確かめる。ここを最初の目標にする。
用意するものを確かめ、資料に沿って構築し、Botが起動して応答するところまでを確認するスライド。Botを作る入口は、Discord公式のBot作成ガイドでも確認できます。アプリの作成、Botトークン、サーバーへの追加は2026年11月時点の公式手順を参照してください。講師はトークンをDiscordのチャットやコード管理の場所に書かないよう説明していました。
Discordの開発者向け画面でアプリとBotを作り、トークンを取得する際の注意を示したスライド。前述のClaude CodeをDiscordで使う設定|Botの作り方とつながらない時の確認もあります。DiscordとClaude Codeをつなぎ、チャットからサムネイルを作る回です。Claude・Codexのスキルの作り方|NotionマニュアルとGmail通知の自動化では、仕事を任せる設計も紹介されています。
どんな人に向き、どこで手間がかかる?
外出中に自宅PCへ仕事を頼みたい人や、複数のエージェントの会話と履歴を一つの場所で追いたい人には、サウスさんの構成が合います。一方、PCの前で直接作業できるなら、遠隔の窓口を増やす利点は小さくなります。
サウスさんは、Claude Code を遠隔で動かす形を、いろいろ試行錯誤して今の形にしたと話していました。
タップで拡大外出中の依頼と複数のエージェントの履歴確認に向く一方、PCで直接作業できる場合は遠隔の利点が小さいことを比べる図。まとめ
- Discordを窓口にすると、スマホから自宅PCのClaude Codeへ仕事を頼み、結果を受け取れる
- デービッドが依頼を整理し、開発・調査・執筆のエージェントに仕事を振る運用が紹介された
tmuxで複数のエージェントを常駐させ、作業の状態と履歴を残している- 作業フォルダ、Discordのチャンネル、操作権限を分けて、最初は狭い範囲で動かす
- トークンをチャットに書かず、公開や課金など外に影響する操作は本人が確認する
- 他人の投稿やWebページの文章をそのまま命令にしない。設定はPC上で変更する
よくある質問
スマホだけでエージェントを動かせますか?
スマホだけでは動きません。Discordは指示と結果確認の窓口で、作業は起動中の自宅PCなどで進みます。
Botを作れば、すぐに仕事を頼めますか?
Botを作っただけでは使えません。Claude Codeへの接続と、受け取る相手、作業場所、権限の設定が必要です。当日は完成までの実習ではなく、構成と資料が紹介されました。
デスクトップPCが必要ですか?
必須ではありません。サウスさんはMac Studioを使っていますが、起動中のノートPCから試す方法も挙げていました。
複数人がいるDiscordサーバーでも安全に使えますか?
そのままでは危険です。サウスさんは「人のいるサーバーにBotを置かない」方針で運用しています。誰のメッセージを指示として受け取るかをユーザーIDなどで制限し、外部に影響する操作には本人の確認を入れます。
APIキーやBotトークンをDiscordに送ってもよいですか?
送らないでください。サウスさんは秘密情報を別に保管し、Discordの会話に書かない運用をしていました。
Webページを要約させるときの注意は?
Webページ内の命令文に従わせないことです。ページやメール、ファイルは指示ではなくデータとして扱うよう、エージェントのルールを定めます。