Superwhisperは、話した音声を文字にするだけでなく、AIが内容を理解してメール文や箇条書きなど用途に合った形へ整えて出力する音声入力アプリです。使いこなしの要は、自分用のプロンプトを入れた「カスタムモード」と、開いているアプリやコピーした文章を参照させる設定の2つです。
2025年8月7日のProcevoのワークショップでは、講師のモーリーさんが、従来の音声入力との違い、導入と基本設定、モードの作り方、業務や日常での活用アイデアまでを実際の画面で紹介しました。その流れを順に整理します。
Superwhisperワークショップのタイトルスライド。講師のモーリーさんの名前とXのアカウントが載っているSuperwhisperとは?従来の音声入力と何が違う?
一般的なOSやスマホの音声入力は、発話をそのままテキストに貼り付けるところまでが主です。誤りや口語の修正、宛名・署名・見出しといった体裁の整形は、別途手で直すか、ChatGPTなどに貼り直す必要があります。
従来の音声入力とSuperwhisperの違いを比べたスライド。SuperwhisperはAIが内容を理解して整えた結果を出す
Superwhisperとは何かを説明したスライド。OpenAIのWhisperをもとにした音声入力アプリで、高速な入力や多言語対応などの特徴が並ぶSuperwhisperでは、文字起こしのあとにAIが内容を解釈し、選んだモードやカスタム指示に沿って最適化したテキストを、カーソル位置へ直接出力します。講座では「喋った内容をChatGPTに貼った結果が、そのまま貼られるイメージ」と説明されました。フィラー(「えっと」「あの」など)の除去や句読点の付与も基本機能に含まれます。
公式サイトは superwhisper.com(https://superwhisper.com/) です。macOS(14以降)、Windows、iPhone、Android向けがあり、講座開催時点のデモは主にMac向けでした。
なぜ音声入力はタイピングより情報を多く出せる?
タイピング中は「次の一文」に意識が向きやすく、頭の中で同時に浮かぶ関連情報や背景が落ちやすい、というのが講座の論点でした。音声では話しながら分岐した考えを選べるため、AIに渡すコンテキスト(背景情報)が増え、出力の質も上がりやすい、という整理です。
タイピングと音声の違いの図。タイピングは次の一文に意識が向いて背景が落ちやすく、音声は話しながら考えを選べてAIに渡す背景情報が増えるAIは渡された材料でしか調理できない、という比喩も使われました。短いタイピング指示より、話し言葉で材料・好み・制約まで含めた方が、レシピ提案のような出力が豊かになる、という例です。ChatGPTなど対話型AIとのやりとりでも、音声入力の方が情報を詰め込みやすい、というのが推奨の理由でした。
Superwhisperの主な機能は?
講座で強調されたポイントは次のとおりです。
Superwhisperの主要メリットをまとめた画面。高度な音声入力、マルチタスク、コンテキストアウェアの3つ- 高精度な音声認識とAI処理:フィラー除去や読みやすい文章への整形
- モード(プリセット/カスタム):メール、メモ、会議、アプリ最適化、独自プロンプトなど用途別に切り替え
- コンテキストアウェア:開いているアプリやページ内容、クリップボードのコピー内容を参照して出力を合わせる
- マルチタスク:録音中に他ウィンドウへ移っても録音が続き、終了時のカーソル位置へペーストされる
- 履歴:発話の文字起こしと、モード経由のAI出力の両方を後から参照できる
Notion上で「このページの内容から良い点を箇条書きで」と話すと、画面の文脈を拾って要約するデモも行われました。これが「3倍・5倍速」と言われる体感の一例です。
インストールと初期設定はどう進める?
公式サイトからアプリを入手し、起動するとメニューバーにアイコンが出ます。Settingsから設定画面を開き、マイクとアクセシビリティ権限を許可します。講座では英語UIの画面を一つずつ確認しながら進め、インストール手順そのものをSuperwhisperで構造化して手順書にするデモも行われました。
Superwhisperを使い始めるまでの4つの手順の図。アプリの入手と起動、マイクとアクセシビリティの許可、Vocabularyへの固有名詞の登録、ショートカットの割り当て語彙(Vocabulary) には、人名や製品名など誤変換しやすい固有名詞を登録できます。Enterで追加するだけで、以降の認識に反映されます。
料金は変わるため、利用前に公式の Plans & Pricing(https://superwhisper.com/docs/billing/plans) を確認してください。2026年11月時点では、無料プランでローカルWhisperモデルによる無制限の文字起こしなどが使え、Proは月額約8.49ドル/年額約84.99ドル/買い切り約249.99ドル(サイト購入時)です。ProではクラウドモデルやAIモード、ファイル文字起こしなどが追加されます。新規はPro機能を約3,000語分試せる案内があります。講座当時は「無料で有料相当を一定時間試せる」「買い切りがある」といった説明でしたが、現行は上記の語数トライアルとプラン構成に読み替えてください。
Aqua Voiceなど他の音声入力との比較では、プッシュトゥトークや買い切りの有無が話題になりました。用途と予算に合わせて選ぶ、というのが実務的な整理です。
ショートカットと録音のコツは?
設定の Configuration では、起動(例: Option + Space)、キャンセル(Esc)、モード切替、プッシュトゥトークなどを割り当てます。プッシュトゥトークをオンにすると、キーを押している間だけ録音する使い方ができます。
キーボードショートカットの設定画面。起動ボタン、キャンセルボタン、モード変更ボタンに日本語の注釈がついている音声認識のコツとして、講座では「口を縦に大きく開ける」と発音がはっきりし、認識率が上がりやすい、と紹介されました。Zoomなど他アプリと同時に使うと、まれにAPI競合で処理が止まることがある、という注意も出ました。会議の正式な議事録は専用ツールに任せ、会議中の自分用の下書きや要約にSuperwhisperを使う、という切り分けが推奨されました。
プリセットモードとカスタムモードはどう使い分ける?
初期から用意される代表的なモードは次のようなものです(UI表記はバージョンで変わることがあります)。
従来の音声入力とSuperwhisperの違いを示した図。Superwhisperは文字起こしの後にAIがモードに合わせて整える- Voice:ほぼそのままの文字起こし
- Message / Email / Note / Meeting:メッセージ、メール、メモ、議事向けの体裁
- Super:開いているアプリに合わせた出力(コンテキスト活用の中心)
- Custom:自分でプロンプト(Custom Instructions)を書くモード
カスタムでは、音声認識モデル(例: Ultra)と言語モデル(ClaudeやGPT系など)を選べます。講座では日本語の自然さからClaude系を好む例が示され、認識側はUltraが高得点、という見方でした。モデル名は更新されるため、画面の速度・精度の指標を見て選ぶのが安全です。
講師のモーリーさんが最初に入れた例として、「日本語でインプットされた文章について出力してください」という短い万能プロンプトが紹介されました。カスタムモードの肝は、この指示テンプレートに沿って、発話・画面・クリップボードをまとめて処理させることです。
アドバンス設定では何をオンにする?
モード右下の歯車から Advanced settings を開くと、次のような項目があります。
アドバンス設定の画面。システムオーディオの録音やアプリ文脈の参照などのトグルが並ぶ- Record from system audio:PC内の再生音(Zoomの相手音声など)も拾うか
- Identify Speakers:話者分離を残すか
- Use application context:前面アプリやページ内容を参照するか
- Use copied text:クリップボードを参照するか
カスタムモードで「画面の内容を踏まえた出力」や「コピーした文の要約・返信案」を狙うときは、後者2つをオンにしておく必要があります。オフのままだと、期待したコンテキストが載りません。
カスタムモードのしくみの図。話した言葉、開いているアプリの内容、コピーした文章を、プロンプトに沿ってまとめて処理し、カーソルの位置へ出力するカスタムモードはどんな用途に使える?
講座では、次のようなモード例が示されました。
カスタムモードのアイデアを並べたスライド。ビジネス、専門分野、日常の用途ごとに例がある
プロフィールから自己紹介文を作るカスタムモード用のプロンプトを書いたNotionの画面- 自己紹介文の整形、議事録化、日英同時出力
- 医療記録風の構造化、コード説明、学習ノート化
- 音声日記、Ask AI(前置きなしで簡潔な回答だけ)、絵文字+区切り付きの接頭辞生成
- YouTube視聴や台本リハーサル中にメモと指示を重ね、最後に本番原稿へまとめる
起動キーワード(例: 特定のフレーズのあとだけタスク扱い)をプロンプトに含める高度な使い方も紹介されました。履歴画面では、生の文字起こし(Voice)とAI処理後の出力をタブで切り替えられるため、整形結果だけ欲しいときと原文だけ欲しいときを分けられます。
Mermaid記法で図を出させ、Notion上でプレビューするデモもあり、音声だけで資料用の図のたたき台を作れる、という応用でした。
音声で操作するAIを自分で作る回として、自分だけの音声AIアシスタントを作ろうもあります。
まとめ
- Superwhisperは文字起こし後にAIが整形・最適化し、用途別モードでそのまま使える文を出力する
- 音声はタイピングより背景情報を載せやすく、AIへの指示品質が上がりやすい
- 語彙登録、ショートカット、プッシュトゥトーク、アドバンスのコンテキスト系トグルが実務の土台になる
- カスタムモードに短いプロンプトを仕込み、アプリ文脈やクリップボードと組み合わせると再現性が高い
- 料金は無料のローカル文字起こしとPro(月額・年額・買い切り)があり、最新は公式のPlansページで確認する
- 会議の本議事録は専用ツール、Superwhisperは下書き・要約・制作補助、という切り分けが現実的
よくある質問
Windowsでも使えますか?
講座デモは主にMacでしたが、公式ではWindowsアプリも提供されています。UIや一部機能の差はバージョンで変わるため、導入時に公式の対応一覧を確認してください。
無料のままでどこまで使えますか?
2026年11月時点の公式案内では、無料でもローカルモデルによる文字起こしなどを継続利用できます。クラウドモデルやAIモードなどPro向け機能は、試用語数のあと制限されます。詳細は公式のPlansページを参照してください。
Aqua Voiceとは何が違いますか?
講座では、プッシュトゥトークの好みや、買い切りプランの有無が比較の論点になりました。どちらも音声入力系であり、料金体系とAI後処理の深さで選ぶ、という整理でした。
カスタムモードが動かない、Zoom中に止まるときは?
講座中も、モデル切替やZoom併用時に処理が完了しない例がありました。履歴に生音声が残っているか確認し、モードやモデルを変える、会議録音は別ツールに分ける、などが対処として挙がりました。個人開発に近いプロダクトのため、一時的な不具合もあり得る、という前提も共有されました。
アプリの画面の内容を読ませても大丈夫ですか?
コンテキスト機能は便利な一方、画面上の機密や個人情報も参照対象になり得ます。業務データや顧客情報を扱うときは、トグルをオフにする、表示内容を限定するなどの運用が必要です。
句読点や改行が思いどおりにならないときは?
単純な文字起こしモードでは話し言葉のままになりやすいです。カスタムモードで「句読点と段落を整え、読みやすい文章にする」と指示する、あとで軽く手直しする、といった方法が紹介されました。
最初に作るならどのカスタムモードですか?
講座のゴールは「オリジナルを一つ作る」ことでした。万能の短文プロンプトから始め、メール返信、日記、コード説明など自分の頻度が高い用途へ分岐させるのが現実的です。